2011年02月19日

父のおもしろ軍隊話・・・1(立哨)

父はなぜか軍隊の日常生活について話すのが好きだった。その話しっぷりは「ドタバタ喜劇」さながら、聞いていると「わっはっは」と大笑いしてしまい、あとで考えてその内容の笑えなさに気づいて深く心に残る、そんな奇妙な話が多かった。
このブログでは行軍の先頭と最後尾の対比的な光景についてや網走刑務所と軍隊の入浴風景の相似などについてこれまで書いてきた。今度それらを一括して「父のおもしろ軍隊話」として書き綴ることにした次第。軍隊についての知識は父のおもしろ話以外にあらためて仕入れていないので、表現上あまり正確でないかもしれない。
というわけで、今回は「立哨」というものについてひとくさりしてみようと思う。広辞苑によると「立哨」とは「歩硝が一定の場所に立って監視すること」とある。父の話は満州(現中国東北部)の国境守備隊の門衛として立哨したときの思い出話である。
父いわく。「軍隊の門番だけど、これが厳しいんだ。立哨の場所に立ったら、ぴりっとも身動きしたらいけない。必要な動き、必要な言葉以外なにもしゃべったらイカン。丸太ん棒みたいに固まっていないとイカン。これがつらい。なかでもいちばんつらいのは冬の立哨だ。寒さが厳しい。足元から頭のてっぺんまでブルブル震えているのに平気な顔をしていないとイカン。で、冷えてくると、小便がしたくなる。でも、決まった時間が過ぎるまで、ぴりっとも動いたらイカン。膀胱は、いまにも破裂しそうなくらい、ぱんぱんにふくれあがる。がまんできなくって、額から油汗がタラア〜!」
聞いているジージたちも、どうすんのかな、と緊張してしまう。父はちゃんとジージたちの反応を見ていて、ここぞというところまで話を引っ張ると、「ついにがまんできなくなると、ええいままよ、やっちゃえ、というわけだ」「ええっ?」やっちゃうってどうするんだろう。目を剥いて父の顔を見上げると、「だしちゃうんだよ。目だけであたりをうかがって、ジャーッと出しちゃうわけだ」
なんと、漏らしちゃうというのである。父はそのときのことを思い出したのか、いかにもホッとしたような顔をしてみせる。「我慢したあとの小便の気持ちいいことったらない。で、小便はというとズボンの中を伝ってずっと下へ降りていって靴の中に溜まる。ちょっとのま、下半身がほかほかして暖かいんだけど、すぐに冷えてくる。一回やったらあとは同じだ。またジャーッ」
長靴みたいなのだからたっぷり溜まる。立哨が終わる頃には軍靴の中はおしっこがたまってぐちゃぐちゃになっているのだという。
立哨終了で「ホッ」。しかし、すぐに営舎には戻らない。交替後、大きな声で軍歌を歌いながら営舎を一周しなければならない。
「鉄砲を担いで足を高く挙げて軍歌を歌って一周するんだけど、軍靴のなかはオシッコだらけ。でも、グッチャグッチャ音をたてながら、心底ホッとしたもんだったなあ」
ジージたちは大笑いし、かつまたオシッコだらけの服と靴はどうしたんだろう、と心配したものだった。オシッコじゃじゃ漏れの立哨と風呂も満足に入れない不潔さと噛まずに丸呑みの玄米ご飯と、父の軍隊話はほんとうの悲惨さにはぜったいに触れなかったものの、あとで考えてみると、ひとつも笑える話ではなかったことに気づくのである。
posted by ガンコジージ at 12:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 記憶 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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