2013年12月05日

本「トップシークレット・アメリカ」

副題は「最高機密に覆われる国家」という。今日の朝日の「読書」頁に「911以降、米国では国家安全保障を扱う政府機関や企業が倍々ゲームのように増殖している」とある。「1200を超える政府組織、25万人以上の従業者、そして政府から業務を請け負う民間会社の人員を含めると、じつに85万人以上の人間がなんらかの『最高機密』にアクセスしている」と、別の書評にも書いてあったが、変な話だと思った。
85万人以上が「最高機密」にアクセスできるとなると、それは「機密」でもなんでもありゃせんじゃないか、と思える。「あまりにたくさんの情報が機密にされたため、そうすることで守ろうとしたシステムをかえって動けなくしている」とこの本の著者は指摘しているそうだ。
ようするに矛盾が生じてくるのだろう。たとえば、あっちにもこっちにも機密があって、本来擦り合わせが必要な事項でも機密の壁で隔てられ、なすべき判断から遠ざけられてしまう。そういうことがあり得るわけだ。
ただでさえ膨大な情報が氾濫しているのに「無数の最高機密に覆われ、ジャングルのごとき迷宮と化した」(楽天ブックスの「商品説明」より)と書かれているアメリカの現実は明日のどこかの国の姿を暗示しているようで恐ろしい限り。
朝日の書評では「機密の緩和・解除は容易ではない。政治家にとって大きなリスクになるからだ。むしろ『念のため』と言う判断がさらなる機密を生み出す。自らの不正行為を隠すために機密指定されるケースも珍しくないという」と書かれている。
さらに重要な指摘は「テロリズムの最大の目的が恐怖心や不安感によって相手を萎縮させることにあるならば、実は、米社会は『テロとの闘い』に着実に敗北しつつあるのではないか」という点である。
ハリネズミは全身いっぱいに増やし過ぎた自分のハリで傷つき、その痛みに耐えかねて他者をいっそう傷つけずにはおかない。そんな感じだろうか。
アマゾンの商品内容紹介では「政府機関のみならず民間機関も組み込まれた機密情報機関網は、莫大な予算が注ぎ込まれて巨大な規模に膨れあがり、情報は錯綜し重複し、統御の限界を超えて機能不全に陥っているという」と書かれている。そりゃそうだ。先に書いた通り、機密と機密のあいだに擦り合わせの介在する余地はない。それがあったら機密は機密としての性質を自動的に失ってしまうに違いない。
最初に機密を取り扱うものたちが、キズを恐れ責任を回避するのを常とする官僚である以上、機密の量は自動的に膨大なものになっていかざるを得ない。また、政権を担当する政治家たちがどれほどあがいたところで、擦り合わせのない機密をまとめあげる力量などあるはずもない。
とにかく興味深い本だ。朝日書評と楽天商品紹介とアマゾン商品内容紹介だけでこれだけのことが書ける。興味をそそられ、さらに考えさせられる。
これだけ機密にあふれたアメリカで、おそらく可能な最大限の真相まで迫ったワシントンポストの記者たちに敬意を表するとともに、こちらの状況を振り返ってしまう。こちらではこんな覚悟のある仕事をする報道機関があるだろうか。奮起を望む!
目次は以下の通り。「永遠に続く警戒態勢/トップシークレット・アメリカ/あなた方が知る必要があるのはそれだけだ/神に誓って偽りは申しません/地図に出ていないアメリカの地理/巨大政府と情報のジャングル/一つの国に地図は一つ/不審な行動を通報せよ/機密を扱う人たち/対テロビジネス/無人機作戦/暗黒物質/一つの時代の終焉」
posted by ガンコジージ at 13:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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